「日本が沈没する?そんなことあるわけないでしょう」
その映画が封切になって以来、こんな話題が私の周囲でも飛び交っていた。
小松左京のSF小説を映画化した、
「日本沈没」
1973年に、そして2006年にはリメイク版が公開された。
日本には活火山が多く、地震の多い国だということは教科書で学んでいたが、
日本の地下にいくつもの「活断層」があり、巨大地震が起きるとどうなるか、
ということまでは、私の知識にはなかった。
しかし、映画「日本沈没」は、SFとはいいながら、
「もしかしたら、本当に日本が沈没するのではないか」という、
強烈なリアル感を迫らせる作品だった。
地球物理学者である田所雄介博士は、地震の観測データから日本列島に異変が起きているのを直感し、調査に乗り出す。
潜水艇操艇者の小野寺俊夫、助手の幸長信彦助教授と共に小笠原諸島沖の日本海溝に潜った田所は、海底を走る奇妙な亀裂と乱泥流を発見する。異変を確信した田所はデータを集め続け、一つの結論に達する。それは「日本列島は最悪の場合2年以内に、地殻変動で陸地のほとんどが海面下に沈没する」というものだった。
最初は半信半疑だった政府も、紆余曲折の末、日本人を海外へ脱出させる「D計画」を立案・発動する。しかし、事態の推移は当初の田所の予想すら超えた速度で進行していた。各地で巨大地震が相次ぎ、休火山までが活動を始める。精鋭スタッフたちが死に物狂いでD計画を遂行し、日本人を続々と海外避難させる。一方、あえて国内に留まり日本列島と運命を共にする道を選択する者もいた。
四国を皮切りに次々と列島は海中に没し、最後に北関東が水没して日本列島は完全に消滅する。
2011年3月11日、マグニチュード9.0という、いまだかつて体験したことのない、巨大地震と巨大津波が、東北地方を襲った。
「東日本大震災」
東京の超高層ビルが揺れに揺れる、押し寄せる大津波にまたたくまに街が家が覆い尽くされていく、工場地帯では大火災が発生していた。
衝撃的な大自然の脅威のこの事実を体験した後、再び「日本沈没」をDVDで観た。
特撮の映像なのに、なんなんだ!この背筋が凍るような恐ろしさは!
もはや、これはSF映画ではない、確かな科学的知見に基づいた、まぎれもなく、
未曾有の大災害への警告の映画だと、痛感した。